担当:上羽 悟史(ueha{a}rs.tus.ac.jp)
細胞・臓器移植に伴う慢性拒絶機序の解明とその解除
白血病などの治療として行われる同種造血幹細胞移植は、最も有効性が確立した免疫細胞治療法の一つですが、ドナーT細胞が異なる組織適合抗原を持つホストの細胞を異物として認識して排除応答を起こした結果発症する移植片対宿主病(GVHD)は、患者の生存予後に大きな影響を与えます。私達は、GVHD患者で頻発する免疫不全の発症機序を解析し、ドナーCD4+ T細胞が骨髄間葉系造血ニッチ細胞を障害することで、造血幹細胞からのリンパ球分化が抑制され、全身性に成熟T細胞、B細胞の再構築が阻害されること(Shono et al. Blood 2010)、ドナーCD8+ T細胞がリンパ節線維芽細胞・高内皮細静脈細胞を不可逆的に障害することで重篤な液性免疫不全に陥ること(Suenaga et al. J Immunol 2014)を明らかにしてきた。最近では、慢性GVHDをもたらすドナー T 細胞の誘導・維持機構を解析し、造血幹細胞とともに移植された成熟T細胞(graft-T)が100日以上残存しており、造血幹細胞からの新規T細胞(hsc-T)産生を阻害していること、一方hsc-Tはgraft-Tの過剰な活性化を抑制していること、すなわちgraft-Tとhsc-Tがお互いを抑制しあいながら慢性GVHDの病態形成に関与していることを明らかにしました(Kosugi et al. Front. Immunol. 2017)。また、同種造血幹細胞移植と坑CD4除去抗体の併用による安全かつ強力な固形がんに対する免疫細胞治療の可能性も検討しています(Shono et al, Blood 2010, Ueha et al. Cancer Sci. 2017)。